先日I様のお引渡しを終えました。
I様と初めて会ったのは。2年以上前のことになります。
いつものように見学会からのセミナーに進んで頂き、オーナーさんになって頂いたお客様です。
ここまでは、普通の方と同じですが、
なんとI様は岐阜に移住するとおっしゃられたのです。
正直初めて聞いた時は、「?」でした。
個人にはいろんな事情があります。
ですから深く追求することはしません。
お付き合いする期間が長い方は、過去にもいらっしゃいました。
親の土地の一部に建てたいんだけど、まだ、耕作中で、しかも造成工事も自分んでしたいから、家が建つの2年後だけどいい?とか。
という方もいらっしゃいました。
その方は、商談中に子供さんが出来て途中中断になり、更に商談が伸びましたが。
弊社では、商談中に子供さんが出来ました!という方が結構多いですね。
さて、今回のI様は、ちょっと事情が違っていました。
実家のある三重から仕事もやめて家族で岐阜にマイホームをたてて言わば移住するという事でした。
いろいろな事情があるという事ですが、弊社にお越しになられた時、「三重から引っ越して、家を建てる」この事情を話すとどの会社も相手にしてくれなかったと言われます。
正直私も、悩みました。
I様の新築をお受けするか、どうか。
そこには、いくつものハードルがありました。
まず、岐阜で家を建てるという事になると、住宅ローンは、岐阜の住所が無ければ受け付けてくれません。
また、普通の金融機関は、1~2年の勤続年数が必要です。フラット35は、ひと月分でも給料明細があればいいという事ですが、それでも、勤続年数が長い方が信用度が違います。
信用度とご主人が転職してすぐ、収入が多くなるとは思えませんでしたので、奥様にも連帯債務者になって頂く必要があり、更に収入も求めれれる為、正社員としてお勤めいただかなくてはなりませんでした。
この条件を満たすために、何をして、どのようなスケジュールを組まなければならないかを考えました。
そして、I様に条件をだしました。「私が言ったとおりにしてください。でなければ、お受けできません。」
I様は、納得して頂きました。
正直、この段階では、私は、半信半疑でした。長い道のりになります。I様は、どこかで、脱落するのではないだろうかと思っていました。
そして、「とにかく早く安いアパートでも見つけて、引っ越しの準備をしてください。と同時にお二人のこちらでの勤め先を探して下さい」と話しました。
I様が良かったのは、約束通り私の言ったことを守って下さったことです。たぶん、大変だったと思います。
ご主人は、勤め先をやめる段取りをしなければなりません。と同時に土地勘のないところで、アパート探しです。精神的にもつらいことが多かっただろうと思います。
私は、1ヶ月に1回I様の進捗を確認しながら、「次は、こうしてください」という指示を出しました。
ご主人は、その通りに行動してくれました。市営住宅を探しだし、勤め先を探して内定をもらいました。もともと木工の職人さんであったご主人は、私が若い頃勤めていた会社と取引があった岐阜では名門の木工所に内定したのです。恐らく、銀行の評価も悪くないだろうという目算がたちました。
問題は、奥様でした。就職先がなかなか決まりませんでした。
そうするうちに、岐阜に引っ越され、ご主人は、新しい職場の勤務がはじまりました。奥様も内定をもらい、1ヶ月の試用期間の後、正式採用になるというところまでこぎつけました。
あとは、ご夫婦の給料明細がそろえば、フラットでの審査が受けられるという事になりました。
しかし、奥様は、その会社を不採用になりました。
理由ははっきりしていました。採用になったばかりの時に、子供さんが体調を崩され、出社がままならず欠勤が続いたために、会社の不信を買い採用を撤回されたのです。
こちらに知り合いも親戚もいない環境では、子供さんを信頼できる方に預けるわけにもいかず、悩まれた結果だったのでしょう。
私自身も悩ましい時期が続きました。ご主人自身も、新しい会社でのストレスが打合せの話の中で、チラチラとみられました。
「大丈夫かなあ」と思いました。
が、少し気をもみましたが、その後奥様が、無事正社員で就職を決められ、1ヶ月が過ぎ、フラットの審査に必要な給料明細をそろえることができました。
そして、フラット35の審査も無事通りました。
これでやっと一安心です。
そして、それから10カ月。土地を買われ、住宅を完成させるに至りました。
2年半の時間、私たちは、I様に指示を出しながら、時には愚痴をきき、時には励まし、家づくりが叶いました。
この経験は、私にとっても貴重なものとなりました。
今、I様は、環境の素晴らしい新居でマイホームライフを満喫していらっしゃいます。
住宅会社として、私たちは、お客様にどう接していけばよいか。
いろいろな会社を断られ、絶望的な気持ちを抱きながら、私たちの前にたどり着いたI様。
当社も他社と同様断わる事も出来ました。しかし、やるべきことを順番に行動していけば、できるだろうという思いもありました。
効率を求められる会社経営というところから見ると正しい判断では、なかったのかもしれません。
けれど、私たちを信じて下さった人の役に立ちたい。その思いが私が最後に決断した理由です。
真摯に家族のために家づくりを志す方の力に、なりたいと思っています。
では、また。